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奈良地方裁判所 昭和52年(行ウ)9号 判決

奈良市西御門町二七番地

原告

浜中達也

右訴訟代理人弁護士

吉田恒俊

同市登大路町奈良合同庁舎

被告

奈良税務署長

上田富雄

右指定代理人

饒平名正也

太田吉美

松本有

西谷仁孝

石田俊雄

坂田行雄

河口進

後藤洋次郎

主文

原告の請求はいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し、昭和五〇年三月一日付をもつてなした

(一) 原告の昭和四六年分所得税につき所得金額を四六八万九、八二七円、所得税額を七七万三、五三〇円(ただしいずれも審査請求により一部取消されたのちの金額である。)とする更正処分のうち、所得金額につき一六三万五、〇〇〇円、所得税額につき九万七、二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税三万三、八〇〇円(前同一部取消されたのちの金額である。)の賦課決定

(二) 原告の同四七年分所得税につき所得金額を三一九万九、九七五円、所得税額を三五万〇、九〇〇円とする更正処分のうち所得金額につき二〇八万円、所得税額につき一四万六、四〇〇円を超える部分及び過少申告加算税一万〇、二〇〇円の賦課決定並びに

(三) 原告の同四八年分所得税につき所得金額を六〇四万二、八〇七円、所得税額を一一八万六、四〇〇円(ただし前同一部取消されたのちの金額である。)とする更正処分のうち所得金額につき二九〇万円、所得税額につき二九万九、九〇〇円を超える部分及び過少申告加算税四万四、三〇〇円の賦課決定

はいずれもこれを取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、昭和四六ないし四八年分所得税につき次のとおり申告した。

昭和四六年分 一六三万五、〇〇〇円 九万七、二〇〇円

同四七年分 二〇八万円 一四万六、四〇〇円

同四八年分 二九〇万円 二九万九、九〇〇円

(上段が所得金額、下段が所得税額)

2  被告は、昭和五〇年三月一日付で以下のとおり更正処分及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件更正処分」又は「原処分」という。)をなした。

昭和四六年分 五三四万三、一八〇円 九八万六、六〇〇円 四万四、四〇〇円

同四七年分 三一九万九、九七五円 三五万〇、九〇〇円 一万〇、二〇〇円

同四八年分 九一〇万〇、四〇九円 二四五万〇、三〇〇円 一〇万七、五〇〇円

(上段が所得金額、中段が所得税額、下段が過少申告加算税額)

3  原告は、被告に対し異議申立をなしたが、被告は昭和五〇年七月二六日付ですべてこれを棄却した。

4  原告は、訴外国税不服審判所長に対し審査請求を行なつたところ、同所長は昭和五二年五月一七日付で原処分の一部を以下のとおり取消す旨の裁決をなした。

昭和四六年分 四六八万九、八二七円 七七万三、五〇〇円 三万三、八〇〇円

同四七年分 棄却

同四八年分 六〇四万二、八〇七円 一一八万六、四〇〇円 四万四、三〇〇円

(上、中、下段の金額については2に同じ。)

5  しかしながら本件更正処分は、以下のとおり違法な税務調査によるものであつて、内容の当否を論ずるまでもなく取消されるべきである。

(一) 昭和四九年五月ころ、被告担当職員が原告方を訪れ、同人と原告との間で紳士的に話を進めること、帳簿等調査に必要な書類は開示すること。資料によつて明らかにされた事項については反面調査をしないことの三点につき合意が成立し、原告は右合意に基づき昭和四八年分損益計算書及び明細書を示した。

(二) 原告はその後も領収書一式を被告担当職員に示したところ、同人は右領収書一式を持ち帰りたい旨の不当な申入をなし、原告がこれを断わると前記合意に反し不当に反面調査を開始した。

(三) さらに被告担当職員は原告の休業日に調査に来られたい旨の申入を無視し、常に営業中の多忙なときにのみ調査に訪れ、原告の営業を妨害しに来たとしか考えられない。

(四) またいずれの調査にあたつても予め調査に行く旨の連絡はなかつたし、調査の具体的必要性、理由等が全く示されなかつたほか、原告の調査理由を示せとの問に対し「調べておればアラがでるやろ」と申し向けるなど予断をもつて調査にあたつていることを明らかにした。

以上のとおり原告は税務調査に対し協力していたにもかかわらず被告は合意に反し、反面調査の必要性も推計課税の必要性もないのにこれを行なつたものであり、右調査手続の違法は明白である。

6  また本件更正処分は所得金額の認定が過大であり、内容的にも取消を免れないため本訴に及ぶ。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1ないし4の事実は認める。

2  同5、6の事実は否認し、主張については争う。

三  被告の主張

1  課税経過について

原告の係争各年分所得税について被告部下職員は昭和四九年五月以降本件更正処分まで一二回に亘り原告方へ臨場したが、原告は部下職員に対し確定申告書に記載されている所得金額の計算根拠を明らかにせず、帳簿書類等も提示しなかった。わずかに五回目の臨場の際、原告は昭和四八年分の収入と支出の各金額を読み上げたので、職員は右根拠となる帳簿書類等の提示を求めたがこれに応ぜず、のちに一部領収書を示したにとどまつた。職員は右一部の領収書によつては実額計算ができないので領収書等原始記録の全部の提示を求め、かつ詳細な検討のためこれらを貸与するよう申入れたが協力が得られなかつた。

このため被告はやむを得ず原告の仕入先等を反面調査した結果に基づき各年分の所得を推計により算出せざるを得なかつた。

なお、原告は反面調査が違法である旨の主張を行なつているが、税務調査はその必要性がある限り範囲、方法、程度時期等につき合理的範囲内で税務官吏の裁量に委ねられているものであり、何らの違法はない。

2  原告の各年分所得について

(昭和四八年分)

(一) 仕入

原告は、回転焼並びにソフトクリーム、冷しあめ及びコカ・コーラ等(以下「雑品」という。)並びにお好み焼の製造販売を業としている者であり、その販売品にかかる原材料の仕入先及び仕入金額は別紙1記載のとおりである。

更にこれらにつき販売品目ごとに仕入内訳を示すと以下のとおりである。

〈1〉 回転焼

回転焼の原材料の仕入先及び仕入金額は別紙2記載のとおりである。

〈2〉 雑品

雑品の原材料仕入先、原材料名及び右仕入金額は別紙3記載のとおりである。

〈3〉 お好み焼

原告は、国税不服審判所に対し、現金仕入が五五五万五、〇〇〇円ある旨申立て、そのうち植田商店、三笠コカカ・コーラ及びひろし屋からの仕入(これらはいずれも前記回転焼又は雑品仕入分)につき資料を提出した。右資料につき被告が調査したところ、金額に若干の差異があるのでこれを修正し、原告申立による現金仕入総額からこれを控除したものをもつて別紙1記載のその他の仕入金額とした。

その他の仕入金額=(現金仕入総額)-(現金による回転焼・雑品の仕入金額)

=5,555,000-(1,644,620+333,480+530,276)

=3,046,624

ところでお好み焼の仕入金額は、昭和四八年分仕入総額から前記〈1〉〈2〉を控除したものとなり、三四八万四、一六九円が算出される。

お好み焼仕入金額=(総仕入金額)-(回転焼の仕入金額+雑品の仕入金額)

=15,510,480-(9,877,815+2,148,496)

=3,484,169

(二) 売上金額

〈1〉 回転焼

前記(一)〈1〉の回転焼原材料費を後記3(三)の同業者の原価率(一―差益率〇・五三三六)で除したものが右売上金額となる。

9,877,815÷(1-0.5336)=21,178,848

〈2〉 雑品

(イ) ソフトクリーム

コーンの仕入数量から破損割合三パーセントを差引いた売上個数に原告申立の販売単価一〇〇円を乗じたもの。

{(28,800+7,200)×(1-0.03)}×100=3,492,000

(ロ) アイスクリーム

アイスクリームの仕入金額を原告のアイスクリーム原価率(一―差益率〇・二〇)で除したもの。

358,436÷(1-0.20)=448,045

(ハ) 冷しあめ

冷しあめの原材料一かんあたり三〇〇杯の販売が可能と仮定して使用かん数に右三〇〇杯を乗じ、さらに一杯あたりの販売単価を乗じたもの。

18×300×30=162,000

(ニ) コカ・コーラ

仕入数量に一本あたりの販売価格を乗じたものの合計額である。

その内訳は別紙4記載のとおりである。

〈3〉 お好み焼

前記(一)〈3〉のお好み焼原材料仕入金額三四八万四、一六九円を原告申立の差益率三〇パーセントを適用し、〇・七で除したもの

3,484,169÷(1-0.3)=4,977,384

以上の売上・仕入を表示すると別紙5記載のとおりとなり、ここから原・被告間に争いのない経費、専従者控除を行うと同年分所得金額七四一万六、一九一円が算出される。

(昭和四七年分)

(一) 仕入

〈1〉 回転焼の仕入

昭和四七年分仕入金額については、天輪製あんからの金額が判明しているが、その内訳は不明である。被告はやむを得ず右金額と前記昭和四八年分の金額をもとに以下の推計計算を行なつた。

(イ) 天輪製あんからの仕入総額に占めるあんの仕入金額の割合

原告は、天輪製あんから回転焼のあんの全部と雑品の原材料の一部を仕入れているところ、各年を通じ右天輪製あんからの仕入品目の割合(あんの仕入金額の全仕入金額に対する割合)は一定と考えられる。従つて昭和四八年分の同所からの仕入総額で同年分のあんの仕入金額を除したものが右割合となる。

天輪製あんの仕入総額に占める同店からのあん仕入金額の割合

〈省略〉

(ロ) 昭和四七年分のあんの仕入金額

昭和四七年分のあんの仕入金額は、昭和四七年分の天輪製あんからの仕入総額に右割合を乗じたものと推計される。

4,358,693×0.7925=3,454,264

(ハ) 同年分回転焼原材料の仕入総額

回転焼の原材料総額に占めるあんの仕入金額の割合は毎年一定と考えられるところ、昭和四七年分あん仕入金額(前記(ロ))を昭和四八年分の右割合で除したものが昭和四七年分の回転焼原材料仕入総額となる。

昭和47年分回転焼原材料仕入総額=昭和47年分あん仕入金額

〈省略〉

〈2〉 雑品の仕入

原告の営業においては回転焼の原材料と雑品の各仕入金額合計のうち回転焼の仕入金額の占める割合は一定と考えられ、昭和四八年分につき右回転焼仕入割合を算出すると八二・一三パーセントが算出される。従つて前記〈1〉の回転焼仕入総額を右割合で除したものが昭和四七年分仕入総額となり、ここから前記〈1〉の回転焼仕入金額を控除したものが同年分雑品仕入金額となる。

回転焼仕入割合

〈省略〉

昭和47年分仕入金額

=昭和47年分回転焼原材料仕入金額÷回転焼仕入割合

=6,628,792÷0.8213=8,071,097

昭和47年分雑品仕入総額

=昭和47年分仕入総額-同年分回転焼原材料仕入金額

=8,071,097-6,628,792=1,442,305

(二) 売上

〈1〉 回転焼

前記(一)〈1〉の回転焼原材料仕入金額に後記3(三)の同業者差益率を適用して推計したもの。

回転焼売上=回転焼原材料仕入金額÷(1-同業者差益率0.5588)

=6,628,792÷(1-0.5588)=15,024,460

〈2〉 雑品

前記(一)の雑品仕入金額に昭和四八年分雑品差益率を適用して推計したもの。

〈省略〉

雑品売上=雑品仕入金額÷(1-雑品差益率)

=1,442,305÷(1-0.5227)=3,021,799

以上の合計額から同年分経費、専従者控除等を差引くと別紙6のとおり同年分の所得金額四九二万六、五四九円が算出される。

(昭和四六年分)

(一) 仕入

〈1〉 回転焼

昭和四七年分と同様の推計により昭和四六年分天輪製あんからの仕入金額五四五万円から「あん」の仕入金額四三一万九、一二五円を算出し、これをあん仕入割合五二・一一パーセントで除した八二八万八、四七六円が回転焼原材料の仕入金額である。

〈2〉 雑品

前同昭和四七年分と同様の推計方法により、回転焼原材料仕入金額八二八万八、四七六円から昭和四六年分総仕入金額一、〇〇九万一、八九八円を算出し、ここから回転焼原材料費を控除した一八〇万三、四二二円が同年分雑品仕入金額である。

(二) 売上

〈1〉 回転焼

右(一)〈1〉の回転焼原材料費に後記3(三)の差益率五四・七一パーセントを適用し(一―〇・五七四一)で除した一、八三〇万〇、八九六円が右売上金額となる。

〈2〉 雑品

右(一)〈2〉の雑品仕入金額に前記原告の昭和四八年の雑品差益率五二・二七パーセントを適用し、一―〇・五二三五で除した三七七万八、三八二円が雑品売上金額となる。

以上から原・被告間で争いのない経費、専従者控除を差引いた六四九万八、〇二〇円が同年分所得金額となる(別紙7)。

3  同業者差益率について

(一) 同業者の選定経過

原告と同じ奈良税務署管内に事務所を有して回転焼の製造販売を営む個人業者のうち、昭和四六ないし四八年の各年を通じ、

〈1〉 同署管内に事業所を有すること。

〈2〉 年間を通じて事業を営むこと。

〈3〉 青色申告書を提出しており不服申立又は訴訟係属中でないこと。

〈4〉 材原のあんは自家製でなく仕入れていること。

のいずれにも該当する業者を抽出したところ別表1記載の同業者1、2の二名であつた。

(二) 同業者と原告の類似性

原告と同業者の類似性の比較は別表1のとおりである。

(三) 同業者率について

右同業者の昭和四六年分ないし同四八年分の売上金額、売上原価、差益金額、差益率は別紙8ないし10記載のとおりであり、その平均差益率は昭和四六年五四・七一パーセント、同四七年五五・八八パーセント、同四八年五三・三六パーセントである。

右のとおり同業者は売上・仕入・所得等につき正確な帳簿を有し、これに基づいて自己の所得等を申告する青色申告業者であること、回転焼は一般に個性の少ない商品であつて差益率は普遍的なものと解されること、原告と同業者に別表1のとおり類似性があることなどから、右同業者の差益率による原告の回転焼売上推計には合理性があるものというべきである。

以上のとおり、被告推計による原告の各年分所得の範囲内でなされている本件更正処分に何らの違法はない。

三  原告の認否と反論

1  回転焼の差益率について

被告は天理市内の二件の回転焼屋の青色申告書から算出された差益率の平均をもつて同業者差益率としているが、まず右業者の住所・氏名を秘匿していること自体、右申告書の成立の真偽が不明であつてこれを基準とする被告の推計は不当である。

また右同業者二件の平均値をもつて同業者差益率とすることも同業者の差益率が一〇パーセント前後くいちがつていることからすると不当というべきである。更に、右同業者の営業地が天理市内である点で奈良市の営業と全く差益率が異なりうるものである。

ことに原告は顧客を引きつけようとサービスに努め、薄利多売をモツトーとした営業を行ない、「あん」を他業者の一・五倍も多く入れ、このことから新聞、ニユースでとりあげられ評判になるほどであつた。原告は回転焼差益率は三五パーセントであると一貫して主張しているものである。(ただし昭和四七年分については、あんの仕入が減少していることから右差益率を四二パーセントとした。)

2  それ以外の商品について

(一) お好み焼の差益率を三〇パーセントとする被告の主張は認める。

(二) ソフトクリーム

ソフトクリームの販売価格を一〇〇円と主張していたのは原告の思いちがいであり、五〇円であつた。

また、コーンの仕入数からの売上個数推計は、破損率三パーセンととするのは妥当でなく五パーセントの破損率は認められるべきである。

(三) アイスクリーム

右差益率が二〇パーセントであることは争わない。

(四) コカ・コーラ等の昭和四八年分の売上金額は認める。

(五) 昭和四八年分の雑品差益率を基準として他の年分差益率であるとする推計は争う。

第三証拠

本件記録中の書証目録および証人等目録記載のとおり。

理由

一  まず原告は、被告の本件更正処分の調査手続に違法があつたと主張し、証人坂本由朗の証言および原告本人尋問の結果(第一回)中には被告の部下である税務署員との間で、特定事項につき反面調査をしないなどの合意があつた等の供述部分が存するけれども、弁論の全趣旨に照らしたやすく措信し難いのみでなく、右税務署員において納税義務者との間で主張のような合意をなす権限を認め、又は調査の連絡義務、その必要性ないし理由の開示義務等を定めた法規は存しないので、所論の点を参酌しても本件調査手続に違法があつたとは認められず、他に本件更正処分の取消事由の存在を窺わせるような証拠はないから原告の右主張は採用できない。

二  そこで本件更正処分の内容について検討する。

(一)  成立に争いのない甲第一、七号証、乙第一ないし五号証、第六ないし八号証の各一、二、第一三号証の一、二、証人横山礼昭の証言とこれにより成立を認めうる乙第九、一二、一三号証の各一、証人大亦増夫の証原とこれにより成立を認めうる同第一〇、一一、一四号証、第一六号証の一ないし四、(大阪国税局長の通達に基づき奈良税務署長が提出した報告文書で同業者の調査表と認められるもの)第一九号証、第二〇号証の一ないし四、証人西村敏昭の証言とこれにより成立を認めうる同第一五号証、第一七、一八号証の各一、二並びに原告本人尋問の結果(第一回)の一部を総合すると次の各事実を認めることができる。

1  原告は、近畿日本鉄道奈良駅近くのロータリー角、タクシー乗場と商店街入口付近で回転焼(小麦粉を練つたものにあんを包み込んで焼き上げる菓子で「今川焼」「たいこ焼」ともいう)、お好み焼の製造販売、ソフトクリームや飲料(以下「雑品」という)の販売等の飲食業を営む白色申告者で取引の実態、収支の明細を正確に記載した帳簿書類を備付けていなかつたが、前記のように極めて立地条件の良い場所に約五坪の店舗を構え、店員を雇用して店頭現金販売をしており、昭和四六、四七年は回転焼と雑品を、同四八年は上記に加えお好み焼を各販売したものの右期間を通じ各個の商品の販売の態様など業務の内容には格別の相異が認められないものである。

2  昭和四八年分所得について

同年分仕入金額は、回転焼、雑品、お好み焼の実態を含め当事者間に争いがなく、またお好み焼については売上金額も争いがないところ、回転焼については、業務の実態、内容が同業者間に差異がないうえに、原告店舗の前記立地条件の優秀性並びに規模の程度を考慮すれば、前掲証拠ことに、前掲甲第一号証、乙第一五号証、第一六号証の一ないし四により認められる差益率五三パーセントに基づく原価率は、四七パーセントと認めるのが相当であるから、回転焼原材料の前記仕入額を右原価率で除して得られた二、一〇一万六、六二七円がその売上高と認められ、雑品としては次の各種のものが含まれるがその中ソフトクリームについては、前掲証拠中の前掲乙第一号証第二、三号証の各二によつて認められるコーンの仕入数量三万六、〇〇〇個に同乙第一一号証によつて認められる販売単価一〇〇円を乗ずると売上金額は、三四九万二、〇〇〇円となり、ツイスクリームについては、同乙第六号証の一、第一四号証によつて認められる仕入金額三五万八、四三六円に対し当事者間に争いのない差益率二〇パーセントに基く原価率八〇パーセントで除して四四万八、〇四五円を算出し、冷しあめについては同乙第一、一〇号証により仕入数量一八かんに一かん当り製品数量三〇〇杯を乗じ一杯当りの販売単価三〇円を乗ずると、その売上額は一六万二、〇〇〇円となる。コカ・コーラ等については、同乙第九号証の一によつて認められる仕入額三三万三、四八〇円に前記差益率二〇パーセントに基く原価率八〇パーセントで除して四一万六、八五〇円を算出できるけれども、当事者間に争いのない被告主張額三九万九、四二〇円を採用することとすると、以上総売上高は三、〇四九万五、四七六円となるのでこれから当事者間に争いのない仕入金額、一般並びに特別経費および事業専従者控除額を引いた残額七二五万三、九七〇円が原告の昭和四八年分所得金額と認められる。

3  昭和四七年分所得について

回転焼および雑品の仕入金額については当事者間に争いがないので、同年分回転焼原材料仕入金額に前記差益率四七パーセントで除して得た一、四一〇万三、八一二円がその売上高と推計され、また雑品仕入高一四四万二、三〇五円に前記昭和四八年分雑品売上高で同年分仕入高を除して得られた原価率四七パーセントを適用すると、昭和四七年分雑品売上高は三〇六万八、七三四円となるけれども原告に有利な被告主張額三〇二万三、七〇〇円を採用すると、昭和四七年分総上売高は、一、七一二万七、五一二円となるから、これより当事者間に争いのない仕入金額、一般および特別経費並びに事業専従者控除額を差引くと原告の昭和四七年分所得金額は四〇〇万七、八〇二円と認めることができる。

4  昭和四六年分所得について

同年分仕入金額、一般および特別経費並びに事業専従者控除額については当事者間に争いがないので、右仕入金額を回転焼並びに雑品に関する前記原価率四七パーセントで除して得た売上高二、一四七万二、一二三円から右仕入金額、一般及び特別経費並びに事業専従者控除額を差引いた残額六八九万〇、八六五円が原告の同年分所得金額と認めるのが相当である。

以上のように認めることができ、原告本人尋問の結果(第一、二回)中右認定に反する部分は、冒頭掲記の他の証拠と比較してたやすく措信し難く他にはこれを覆えすような証拠は存しない。

三  そうすると、原告の昭和四六年分ないし同四八年分所得税について、前記認定にかかる所得金額の範囲内でなした被告の本件各更正処分(裁決後のもの)はすべて適法であるから、その取消しを求める原告の本訴各請求をいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山田賢 裁判長裁判官仲江利政、裁判官三代川俊一郎は転任のため署名押印できない。裁判官 山田賢)

別紙1

昭和48年分 仕入明細表

〈省略〉

別紙2

昭和48年分 回転焼原材料仕入明細表

〈省略〉

別紙3

雑品仕入金額

〈省略〉

別紙4

昭和四八年分 コカ・コーラ等売上明細

〈省略〉

別紙5

昭和48年分 所得金額明細表

〈省略〉

別紙6

昭和47年分 所得金額明細表

〈省略〉

別表7

昭和46年分 所得金額明細表

〈省略〉

別紙8

昭和46年分

〈省略〉

注 内書は回転焼販売にかかる金額である。

平均欄の差益率は回転焼である。

別紙9 昭和47年分

〈省略〉

注 内書は回転焼販売にかかる金額である。

平均欄の差益率は回転焼である。

別紙10 昭和48年分

〈省略〉

注 内書は回転焼販売にかかる金額である。

平均欄の差益率は回転焼である。

別表1

原告と同業者の類似性の比較

〈省略〉

別表2

所得金額明細表

〈省略〉

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